奥深き 光学メディアの世界

奥深き 光学メディアの世界

CD、DVD、Blu-ray Disc…
ご存知の方も多いと思いますが、これらの「裏面がキラキラ光るディスク」のことを総称して「光学メディア」といいます。
※メディア=「情報の記録や伝達、保管に使われる物」の意味があります。転じて「≒マスコミ」の意として使用される事も。

1980年代に登場した「コンパクトディスク(以下『CD』)」。
1990年代後半に登場した「DVD(Digital Versatile Disc)」
2000年代半ば頃に登場した「Blu-ray Disc(以下『BD』)」

磐石のシェア+進歩著しい「光学メディア」ですが、その仕組みについてどれくらいご存知でしょうか?

「何で光ってるの?」「レーザーの反射で読み取るってどういうこと?」「なんで容量がそれぞれこんなに違うの?」

お仕事などで携わっていない限り、これらの質問に正しく回答できる方は少ないのではないでしょうか?

本特集では、この身近なアイテム「光学メディア」の仕組み、ギモン、裏話などについて、
ごくカンタンに、そして少しだけ詳しくご紹介したいと思います。

知っていれば自慢も出来る(かも知れない)「奥深き光学メディアの世界」、スタートです。

どんな仕組み?光で読み取る「光学メディア」

「どうしてCDから音楽が出るの?」
と、お子さんから質問されたとき、どう答えればいいのでしょう?

もっと知りたい

「機械が光で照らしてちっちゃく書かれた音楽を読んでるんだよ」
とでも答えておけば、まぁ間違いではありません。

小中学生が相手なら
「レーザー光線を当てて、反射でデータを読み取ってるんだ」
くらいの説明をしてもよいでしょう。

ただ実際のところ「レーザーの反射で読み取る」ということを
イメージ出来ている方は少ないのではないでしょうか。
反射で何を読み取っているというのでしょう?

もしその点に踏み込んだ質問をされたら…
「そういう仕組みがあるの!」
と押し切ってしまうこともあるのでは…?

実際どのような仕組みでCDやDVDは、音楽や動画を読み出しているのでしょうか?

それを理解するには、まず以下の「大前提」を把握しておいていただく必要があります。すなわち…
♦音楽も動画も、デジタルデータはすべて『0』と『1』の集合体である
と、いうこと。どんなメロディも、細かな画面も、複雑なプログラムデータも、
ざっくりといえばすべて「0」と「1」の組み合わせを何億、何兆と重ねあげることで、組み立てられ、記録されているのです。

これを念頭に「光学メディア」に話を戻すと、CDやDVD・BDには「『0』と『1』がびっしり並んでいる」ということです。
しかし当然ながら、ミクロの「0」「1」が、ディスクに印字されているわけではありません
「0」と「1」を「ある法則」に割り当てて、判断するのです。
つまり光をあててみて…

反射した光の明るさが変化するところは「1」!!
変化しないところは「0」!!

ということにしたわけです。

光学メディアの記録面 簡略図

このようなルールにのっとり、光学メディアの記録面には光を反射する点がぎっしりと並べられています。光学メディアの記録面の「光沢」は、非常に細かく配置された「明暗」が織り成す輝きだったのでした。
…もっとも「BD」などの場合「CD」と違い、目で見える輝きがないことがほとんどですが…

【ここをクリック!】ちょっと「う・ん・ち・く」:変調方式

さらにディスク上に書き込むデータは、特定の変調方式でデータ量を増加させて記録しています。
あまりに長くデータに「0」が続いている場合、機器がどこを読み取っているか誤認しやすくなりますし、あまりに「111111…」と切替が頻繁すぎると、ディスクの製造が困難になるばかりか、切り替わりを読み取る処理が追いつかなくなり、読み取り不能になりかねません。そこで、ディスクにデータを記録する際には「0」と「1」が定期的に登場するよう特定の変調方式を使って、「節目」や「ゆとり」を意図的に作って記録しています。つまり…

「000000…」などとたくさん「0」が並んでいるデータには、目印代わりに「1」が挿入され「00010000001…」などに、「1111…」など、切り替わりが多いデータに対しては特定の法則で「0」を挿入して「0010001001…」などとなるよう変調され、データ量を増やして記録しているのです。

その他にも微細なキズなどの「読み取り不可」に対応するエラー訂正用の信号データや、(音楽CDの場合)時間記録の信号データなど、記録するデータそのもの以外にも「制御用データ」が膨大に付加されるので、例えば「80分≒700MB」などとされている

音楽CDには、実は「2GB以上(!)」のデータ量が記録されていたりします。

もはや「大容量」の印象がないCDが、実はギガバイト越えの記録がされているなんて、ちょっと驚きですよね。

なお、CDの場合は8ビットのデータに「0」や「1」を加えて14ビットに「変調」する「EFM」という変調方式が使用されており、
上述の仕組みはこの「EFM変調」を例に説明しています。
DVDではさらに複雑なルールを用いた「EFMPLUS」(8-16変調方式)、
BDではさらにさらに複雑なルールで、かつ効率化もした「17PP」(2-3変調方式)という変調方式が使用されています。

「う・ん・ち・く」説明をたたむ

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何が違う?CD・DVD・BD

実はたいして変わらない…ということはご存知でしたでしょうか?

もっと知りたい

「変調方式」や「レーザー」の違いなどはありますので、「変わらない」というのは言いすぎとしても、基本的な原理はほぼ一緒です。
レーザーを当てて、明暗から「0」か「1」かを判断する…つまるところ、その違いは、
「より細かく記録、読み出しが出来るよう工夫した」
ということなのです。

具体的にはどのようにしたのでしょうか?

【ここをクリック!】「CD」の場合

まずは基本となる「CD」の仕組みについて、ご紹介しましょう。

前述の項目で解説したとおり、光学メディアの一種かつ元祖である「CD」は、レーザー光線を照射し、その反射具合でデータを読み取ります。
その反射が生まれるあの「CD特有の光沢」は何の輝きかというと、「アルミニウム」の膜によるものなんです。
そして断面は表から言うと、「印刷層(レーベル面)」「保護層」「記録層」「樹脂層」の順となっています。

【ここをクリック!】「CD」の断面図
音楽CD(もしくはCD-ROM)裏表の断面図

音楽CD(もしくはCD-ROM)裏表をひっくり返してみた場合の
断面図が、右の図です。

樹脂層

透明な「ポリカーボネート樹脂」で作成され、「ディスク基盤」とも呼ばれます。「基盤」の名が示すとおり、厚さは約「1.2mm」とCD全体の厚みのほとんどを占め、CDの「骨格」ともいえる部分です。レーザー光は、この樹脂層を貫通して記録層に照射、その反射を読み取ることになります。

記録層

「反射・記録層」「記録膜層」とも呼ばれ、いわゆるキラキラ光る光沢面は、この層の輝きになります。
0.08um(マイクロメートル )(= 0.00008mmほどの超極薄のアルミニウムで作られ、表面には「0.11um」(≒0.00011mm)の「起伏」が作られています。へこんでいる部分を「ランド」、盛り上がっているところを「ピットといい、この「ランド」と「ピット」が反射の「明暗」を分ける重要な存在になっています。

※「ピット」は本来「くぼみ」という意味ですが、これは「レーベル面(印刷層)」側から見たときの状態で命名されているためです。

なお、厳密には「記録層」に起伏が作られているわけではなく、製造過程で「樹脂層」に起伏が作成され、
そこに均一にアルミを塗りこめることで、記録層が起伏形状になるよう成型されています。

保護層

「記録層」を守る「保護層」ですが、厚みは大よそ20um(0.02mm)程度しかありません。
「保護」の名を冠していても、実際は「記録層をむき出しにしない」といった程度の保護能力です。

印刷層

商品によって異なりますが、厚みは保護層と同じ20um(0.02mm)前後とか。
「保護層」と足しても、印刷面から記録層までは、わずか「40um(0.04mm)」しかないことになります。

よく「CDの裏面に傷をつけてはいけない!」と注意を促されることがあるかと思います。
これは透明な「樹脂層」に傷がつくことで、記録層に向かうレーザー光やその反射光が、乱反射で正常に読み取れなくなるためで、確かに必要な注意事項ではあります。
ただし、「断面図」でご紹介したとおり、読み取りに必要なアルミ箔の「記録面」は、印刷面から「0.04mm」程度の極薄の位置にあることから、
「印刷面」にダメージを負うことでも記録データは破壊されてしまうのです。
実は「裏面」以上に「表面(レーベル面)」についても、傷などをつけぬよう、慎重な取り扱いが必要なのでした。

「CD-R」や「-RW」でもほぼ同様の厚みで、レーベル面のたった「0.04mm」が削れただけで使い物にならなくなる可能性がありますので、無地のレーベル面に「鉛筆」や「ボールペン」などの鋭いものでタイトルを書き込んだり、粘着力の強いテープ(セロテープ含む)を貼り付けて剥がしたりすることは、決してしないよう、ご注意ください。

なお、DVDやBDに関しては、レーベル面から記録層までの厚みが増え、レーベル面側の削れには多少強くなっています。
しかし「BD」の場合、その代わりに…といった話があるのですが、これは別項目でご紹介いたします。

「CD」の断面図をたたむ

さて、光学メディアでは、透明である「樹脂層」側からレーザー光を極限まで細く絞って照射し、
「記録層」の起伏(『ランド』と『ピット』)に反射させることで「明暗」を読み取り、2進法のデータとして処理します。

つまり「レーザーを当てたときに『暗い部分』と『明るい部分』が生まれること」が、仕組みの"キモ"となるわけですが、
この「明暗」は「起伏(ピット)」を作ることで発生する「光の位相差」によって作られています。

…といって、ピンと来る人は、理数系の方くらいでしょうか。
要は、『ピットにレーザー光を照射して発生する乱反射で反射光を暗くしている』と思ってください。

詳しく、より正確に知りたい方は、以下の詳細情報をご参照ください。

【ここをクリック!】ちょっと「う・ん・ち・く」:光の位相差による明暗発生の原理

CDの読み書きで使用されているレーザー光も含め、「光」とは電波や放射線と同様「電磁波」の一種です。
電磁波の持つ電場と磁場の振動における「波長の長さ」によって『人間側が勝手に』電波だ、可視光だ、紫外線だ、放射線だと種類を分けただけに過ぎません。
電磁"波”の文字が示すとおり、光にも振動があり「振動1往復分の長さ≒波長」で表現されます。例えば人間の「眼球」の能力でキャッチできる波長は「380nm(ナノメートル)~760nm」程度の範囲で、これを「可視光」と呼んでいるだけなのです。
そして人間が目視できない、これより短い波長の電磁波が「紫外線」や「放射線」、長い波長が「赤外線」や「電波」の領域になっていきます。

CD読み書きの際に使用されている「レーザー光」は、可視光より若干波長の長い「780nm」の「赤外線レーザー」が使用されています。
さて、このレーザー光がCDの記録層に当たった場合、その場所(「ランド」部分か「ピット」部分か)によって、以下のように異なった反射光が発生することになります。

「ランド」部分の場合「ピット」部分の場合

「ピット」により減光され、反射する明るさは「約60%」とか。アルミの反射率が「約70%」ですので、ピット部の明るさは照射時の「約40%」ほどになります。
この反射光の明るさの違いを「明」と「暗」に判別することになります。
すなわち、反射光が「照射時の約70%」を「明」、「照射時の約40%」を「暗」と判定することで、データを読み取っているのです。
「ピット」の「0.11um」という「起伏の高さ」は、「波長のズレ」で反射光の明るさが相殺されるよう、赤外線レーザーの「780nm」という波長、
および樹脂層である「ポリカーボネート」の屈折率などから逆算されて、決められた高さだったのでした。

では、なぜこんな極小の「ピット」をわざわざ作って、反射光の明るさを制御しているのでしょうか?
「黒とかの暗い色でも塗って、明暗を作るほうがわかりやすいのに…」とは思いませんか?
それは「製造の容易さ」に理由があります。

直径12cmの円盤の上に約700MB(『ちょっと「う・ん・ち・く」:変調方式』の項目でもお伝えした通り、制御に必要なデータも含めれば2GB以上)もの
情報量を収めるため、ピットの大きさはわずか「幅0.5um 、長さ0.83um ~ 3.56um」です。これは縮尺をかえると…

CDのディスクを野球場のサイズに拡大した時の、シャープペンシルの芯1本分の幅

ということに。しかもこれだけ拡大しても厚さ(≒起伏の高さ)はシャープペンシルの太さ「0.5mm」の約5分の1=「0.1mm」!
ピットのサイズとは、実はこれほど小さな世界での話になるのです。

ここまでの極小構造となると、ピットを設ける代わりに「データに応じて寸分たがわず暗い色を塗る」ということはとても困難になります。
1~2枚の製造であればそれでもいいですが、「音楽CD」のような「大量生産」を行うことはほぼ不可能。

ところが、これが「ピット」のような「デコボコを作る」ということになれば、「原版」となる型さえ作ってしまえば、あとは「プレスの繰り返し」によって大量生産が可能。チマチマと色塗りなどする必要もなく、原版でポリカーボネート樹脂のプレス(数十トンもの高圧をかけたプレス)をすればデコボコは完成。
わずか数秒で1枚が作成できるのです。

※このため、音楽CDなどの「製品」としてのCDは「プレスCD」とも呼ばれます。

※正確にはこのプレス後、「スタッパリング法」などという製法を使用してポリカーボネートのデコボコに均一にアルミ層(記録層)を形成する工程や、
保護層、印刷層の形成工程を経て、CDが完成します。

馴染みづらい「光の位相差」までも使用して反射光の明暗を区別させているのは、
大量生産を視野に入れた、「製造上の理由」によるものだったのでした。

「う・ん・ち・く」説明をたたむ

音楽CDを代表とする「CD-ROM」の構造について、ご紹介しました。
CDが発売されたのが「1982年」。販売用に一番最初に生産されたのは「ビリー・ジョエル」のアルバムだったとか。
既に30年以上も前の発売になるわけですが、その仕組みは現在紐解いてみても驚異的な技術であると感じられたのではないでしょうか?

ちなみに、書き込み可能な「CD-R」や、書き換えも可能な「CD-RW」では、構造が若干異なります。興味を持たれましたら、以下の詳細をご覧ください。

【ここをクリック!】ちょっと「う・ん・ち・く」:「CD-R」のしくみ
「CD-R」の構造

「CD-R」の場合、構造がちょっと異なります。いくつかある特徴をご紹介しましょう。

【グルーブ】≒「案内溝」
最初から「ピット」が連続的に設けられている「プレスCD」と違い、「CD-R」には何も記録がされていません。つまり、ディスクの表面の『目印』にあたるものが何も無いことになります。もしここにレーザー光線を当てたとしても、ドライブ側では「どこが始まりで、どこが終わりなのか?」「決まった場所をまっすぐ読み書きできているのか?」という判断ができないことになります。この問題を避けるため、記録する場所を盛り上がらせ、かつ左右にうねるようにしました。

この盛り上がった溝を「グルーブ」といいます。「グルーブ」のうねり方(「ウォブリング」といいます)は、そのCD-R上の位置によって決まったうねりになっており、ドライブ側は「グルーブ」とその「うねり具合」を計測することで「どの位置にレーザー光を当てればいいのか?」「現在どの位置を読み書きしているのか?」を判断しているのです。

※もう少し詳しく言うと、CD-R上の位置情報データが、うねることによって発生する反射光の明暗で記録されています。
つまり、位置情報データに従った形でうねり具合がきまっているわけです。
…実際はそれ以外の情報も記録されていたり、位置情報データが変調されていることなど、他にも様々な工夫がされているのですが、
その全ての詳細な解説は難解かつ膨大のため、ここでは割愛いたします。

【記録層】
CDではピットやランドを形成しながら、反射の役割も担っていた「記録層」ですが、CD-Rでは役割がやや異なります。
反射層が別に設けられていることから、記録層は「有機色素」(「フタロシアニン系化合物」が主流)というもので作られており、
読み取り時のレーザー光や反射光はこの層を通り抜けていきます。

では、書き込み時にはどのように「明暗」をつくっていくのか…?

これは、記録層に読み取り時よりも強力なレーザー光を照射することで、記録層を熱分解して薄くし、
さらに樹脂層を溶解して隙間を埋めることで、適切な「光の位相差」を生み出している
のです。(以下図参照)

記録層を熱分解

???

プレスCDでは、ピットを「出っ張らせる」ことで、光の位相差を生み出していました。しかし、今回は凹ませています。
しかも、凹んだのは「記録層」だけで、実際にレーザー光を反射させる「反射層」自体に影響はありません。これでは「位相差」生まれないのでは…?

実は「CD-R」の場合、記録層の「屈折率」を利用して、光の位相差を生み出しているのです。

書き込みレーザー照射前の場所では…

高校の理科でおぼろげながら覚えている方もいるかもしれません。教科書でよく図入りで解説されていた空気中の光が水中に入るときに曲がる」という現象が、光における「屈折」です。

これは「材質が変われば、その中を進む光の速度が変わる」ということを示しているのですが、真上からまっすぐ照射された場合、「曲がる」現象は発生しないものの、「速度が落ちる」≒「波長が短くなる」現象は起きています。

このことを利用し、保護層の厚みを変えることで、反射光の位相をずらし、明暗を作っているのです。

詳細は右図をご覧ください。

プレスCDは「出っ張り」で光の位相をずらしていましたが、CD-Rの場合は「窪み」で光の位相をずらしているわけです。

…よく思いつくものです…

なお、ご紹介したとおり、位相差は「記録層を熱で分解し、樹脂層も溶解させる」ことで生み出しています。よって、この「分解された記録層+溶解した樹脂層」を、元通りに復元することができません。
これが「CD-Rの書き込みが1回限り」となっている理由です。
また、これらの仕組みが元となって、「CD-Rに書き込むこと」を「焼く」と表現するようになったのでした。

【反射層】
CD-Rでは、レーザー光反射のためだけの層として「反射層」が成型されるようになりました。開発当初は「金」で作られており、結果メディア価格も高額だったようですが、最近では、剥離しにくく、材料費も抑えられ、一定の反射率が得られる「銀」製が主流となっています。

以上のような特徴・特性を持つCD-Rは、書き込みができ、データの保存が利くメディアとして普及しました。
ほとんどの人が1度や2度はお世話になったことがあるのではないでしょうか?

「太陽誘電」社が世界で初めて開発し、販売を始めたのが1988年。30年近く経つわけですが、その「太陽誘電」社も2015年一杯で製造販売を中止。
そしてなんと国内でCD-R、DVD-Rを製造する会社はいなくなってしまうのだとか…
これほどの創意工夫を施してはいても、やはり消えてしまうというのは、時の流れの残酷さを感じさせます…。

「う・ん・ち・く」説明をたたむ

【ここをクリック!】ちょっと「う・ん・ち・く」:「CD-RW」のしくみ
「CD-RW」のしくみ

「CD-RW」の場合となると、また構造が異なってきます。
「グルーブ」があること、「反射層」が設けられていることなど、共通のものもありますが、「記録層」の材質や、書き込み時の反応などが大きく異なるのです。

【記録層】
CD-Rと最大の違いをもつのが、この「記録層」の部分です。
CD-Rではレーザー光の加熱で熱分解を起こす「有機色素」が使用されていましたが、CD-RWでは材質の特徴が変化し、かつ元に戻す事もできる「相変化材料」というものが使用されています。

CD-RWで使用されている「相変化材料」は、複数の元素(「アンチモン」や「テルル(テルリウム)」等、「三元素」ないし「四元素」)の合金で、「結晶化」(クリスタル)「非結晶化」(アモルファス)の変化をレーザー光の加熱具合によって制御できる材質です。そして「結晶化」した時と「非結晶化」した時では、光(レーザー光)「屈折率」が異なります。つまり「光の位相差」が生み出せる、ということなのです。さらに「元に戻せる」という特徴を使うことで「繰り返し読み書き可能(ReWritable ≒ RW)」な記録メディアとなっているのでした。

では、具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?

初期記録層 = 結晶化状態、書き込み時、消去時、非結晶化部分の断面図

「記録層」に使用されている「相変化材料」は当初は結晶化された状態です。

ここに強力なレーザー光を当て600度あたりまで加熱すると融解し、構造が変化・非結晶状態となります。そしてそのまま冷やすと「高温→常温」への「急冷」となり、非結晶状態のまま固まってしまいます。

また、レーザー光を「やや強め」程度に制御し、200度くらいまで過熱、その後冷却してやると、「やや高温→常温」へのゆっくりした冷却となり、非結晶状態が次第に整列し再結晶化するのです。

右図をご覧頂くとイメージしやすいでしょう。

この特性を利用して、「結晶化⇔非結晶化」を制御し、CDで言うところの「ピット」にあたる部分を「非結晶化」します。

すると屈折率の違いから、「非結晶化」部分の反射光は、結晶化している部分の反射光と「光の位相差」が発生。干渉が起きるため、減光されます。
※また、「非結晶化」部分の方が「光吸収係数」が高く、反射光が弱められる、といった理由もあるようです。

これによって、CD-RW上に「光の明暗」が形作られることになるのです。

本当に、よく思いつくものです…。

なお、このように「強力な加熱」や「急冷」を繰り返し記録層で行うことから、CD-RWの記録層は「熱からの他の層の保護」および「構造変化の促進」のための「誘電(体)層」という絶縁体で挟まれています。

これらの仕組み、読み書きの原理の関係上、CD-RWは反射率がプレスCDよりもかなり低く(なんと、反射率は20%程度なんだとか!)、読み込みに限定した場合でも、「強いレーザー光」や、「精度の高い光学レンズ」を必要とします。
そのため、古い「CDラジカセ」などでは、「CD-RWで作った音楽CDが読み込みできない」ということがよくありました。
仕組みや反射率を考えれば、非対応機での使用が難しいことも想像できます。
最近では、ドライブ側も(オーディオ機器であっても)「CD-RW対応」という機器が増え、「読めない」というケースはあまり見かけなくなりました。

以上のような、「高温、急冷を繰り返す仕組み」ですので、CD-RWが「書き換え可能」といっても、書き換え回数は「1000回程度」という限度があります。
まぁ、1枚のCD-RWを「1000回」書き換えすることなどはあまりないとは思いますが…。

また、「高温」による変質を利用しているため、長時間の高温環境下では「記録層」がダメージを負い、せっかく記録したデータが破損・消失することがあります。これは「熱分解」を利用する「CD-R」や、DVDなど他の光学メディアでも同様。書き込み済みの光学メディアに対しては、「直射日光に長時間さらす」ようなことは絶対に避け、「高温の自動車内に長期間放置」というようなことも、できる限り控えたほうがよいでしょう。

「う・ん・ち・く」説明をたたむ

「CD」の場合をたたむ

【ここをクリック!】「DVD」の場合

では、DVDにはどんな特徴があるのでしょう?

DVDは「Digital Versatile Disc」の略です。
「versatile」とは「多目的な」という意味ですので無理やり日本語にするなら「デジタル多目的ディスク」とでもいいましょうか。
データ書き込みなど、多用途で利用可能であるため、この名前となっていますが、「V」が「video」や「visual」だと思っていた方も多いのでは?

容量は一気に「CDの約6倍」である「4.7GB」!(片面一層の場合)
同じサイズでこれほどの容量アップなのですから、さぞかしすごいテクノロジーが駆使されているのではないか…と想像しますが…

確かに「すごいテクノロジー」を使ってはいるのですが、理屈は拍子抜けするほど単純です。つまり…

ピットの幅や間隔を減らして、容量を6倍にしました!!

「それが出来りゃ、そうなるよね」という至極わかりやすい進化をしたわけです。

実際はどういうことなのでしょう?

【ここをクリック!】「CD」と「DVD」の比較:1 - 各要素の物理的な大きさ
各要素の物理的な大きさ

上の図は、CDとDVDを「真裏」から見た際の、簡略化した拡大図です。

ピットやその間隔、さらにレーザー光が形作る「ビームスポット」が小さくなっていることが分かります。
ピット長さの最小サイズは、CDに対してDVDは約1⁄2(0.83um→0.4um)
単純に考えるとこれだけで、同じサイズのディスク状に、CDの「2倍」のデータをDVDには書き込めることになります。

また、ピットの幅も3割減(0.5um→0.35um)ピットの間隔も半分以下(1.6um→0.74um)、となっていますので、
こういった物理的な「高密度化」と、記録信号の工夫などにより、DVDはCDの「約6倍」の容量を確保するに至ったのです。

この「高密度化」を実現するには、読み書きで照射するレーザー光のビームスポットを『小さくする』という進化が不可欠でした。
図をご覧いただくと分かる通り、「CD」で使用されているビームスポットを、そのまま「DVD」に当てた場合、
隣の列(「トラック」といいます)のピットまで範囲に入ってしまうため、正しく明暗を読み取ることが出来ません。
同じディスクサイズで容量を増やすためには、「レーザー光をさらに絞込む」ことが必要だったのです。

ところが、この「絞り込む」ということが、CDの既存の仕様では技術的に難しいことでした。

「CD」と「DVD」の比較:1 - 各要素の物理的な大きさをたたむ

【ここをクリック!】「CD」と「DVD」の比較:2 - レーザー光

「光の絞込み」には「限界」があることをご存知でしょうか?

回折限界

どれだけ高価な機器を用意しようと、光を絞り込んだときに出来る「ビームスポット」には、
「これ以上はムリ!」という限界のサイズがあるのです。

例えば、右図のように、光をどんどん絞り込み、ビームスポットをどんどん小さくしていくと、
ある段階より先は、スポットの輪郭が崩れていき、光が収束しなくなってしまうのです。
これを光の「回折限界」といいます。

この現象は、光のもつ「波長」と、絞込みを行う「レンズ」(および「機器」)の性能によって決まります。
レーザーの「波長」が短いほど、また「レンズ」や「機器」の性能が高いほど、
絞込みの際のスポットを小さくすることができる
のです。

※ちなみにこの「回折限界」によって「光学顕微鏡」にも限界が発生。すなわち観察対象がボヤけてしまうようになってしまったため、
可視光よりも波長が短い「電子線(一種の放射線)」を利用した、より倍率拡大の可能な「電子顕微鏡」が開発されました。
もっとも、デジタル処理等の科学の進歩による様々な工夫の導入によって、光学顕微鏡(の一種)の性能は年々上昇しています。

巨大で高価な設備を用いれば、照射するレーザーのビームスポットを極限まで小さくすることができますが、
個人で安価に使用することが前提の「光学メディア」で、そのような機器を「ドライブ」に組み込むわけにはいきません。
そのため、「CD」で使用するレーザーは「赤外線レーザー:波長780nm」に落ち着き、ビームスポットは「直径約1.7um」となったのです。

では、「DVD」ではどうしたか?

使用する機器の性能を2倍や3倍にすれば、ドライブのサイズや価格は跳ね上がります。
となれば、機器の改善は施しつつも、「レーザー」の種類を変えるのが、もっとも効率的!

ということで、「DVD」には、ドライブの価格やサイズを抑えつつ実現可能な、CDで使用されていた「赤外線レーザー」より波長の短い
赤色レーザー」「波長:650nm」を使用することに。結果、ビームスポット直径を「1.1um」にすることが出来た
のでした。

参考までに、以下の「電磁波のスペクトル」の簡略図をご覧ください。
図の左に行くほど周波数が高く(波長が短く)、右に行くほど周波数が低い(波長が長い)分布となっています。
「赤外線レーザー」より「赤色レーザー」の方が周波数が高くなるため、ビームスポットがより小さく絞りこめるようになります。そして「赤色」よりも「青色」の方が…
この点については、後述する「BD」についての部分でご紹介します。

「電磁波のスペクトル」の簡略図

「CD」と「DVD」の比較:2 - レーザー光をたたむ

「DVD(DVD-Video)」が市場に登場したのが「1996年」ですので、約20年経ったことになります。
ドライブの低価格化と相まって、大容量のメディアとして定番の存在となり、今や光学メディアの代表格と言えるほど普及したのでした。

DVDはCDと同じく「-R」「-RW」が開発されましたが、その原理の大よその部分は「CD-R」や「CD-RW」などと似通っているため、ここでは割愛いたします。
あらかじめご了承ください。

なお、「DVD」にまつわる話として、「CD」の時代には無かった点があります。

  • なぜ「+R」「+RW」「-RAM」という規格もあるのか?
  • 「DVD-R DL」などという「2層式」のメディアがあるが、この「DL」とは何か?

避けて通るにはあまりに大きなジャンルのため、ごく簡単に触れておきたいと思います。
興味を持たれましたら、以下の詳細をご覧ください。

【ここをクリック!】ちょっと「う・ん・ち・く」:「+R」「+RW」「-RAM」にまつわる四方山話

多数の規格が生まれるきっかけは、読み込み専用のDVD、「DVD-ROM」誕生の経緯から始まります。

CDが市販され始めてから約10年後の1990年代初め。「レコード」の販売数を上回った「CD」は、音楽業界における提供媒体として磐石の地位を築きつつありました。
そして各企業は次のターゲットを「映像(動画)」の分野に定め、
「ビデオテープ」に代わる新たなメディアとして、「次世代CD」つまり「第二世代光学メディア」の開発に励み始めていました。

そして、ソニーやフィリップス社が「MultiMedia Compact Disc」(以下「MMCD」)というディスクを開発・発表。
ほぼ同時に、東芝やパナソニックといった企業7社が「Super Density Disc」(≒超高密度ディスク、以下「SD」)を発表。
2つの規格のどちらが「CDの次」の座を得るか、激しい開発競争と、世界を股に掛けた各企業への紹介・自陣営への引き込み合戦を、水面下で繰り広げていたのです。

ただ、両規格が正面衝突すれば、決着が付くまでの間市場は混乱し、勝っても負けても多大な被害は免れません。
そこで各社は協議の末、次世代光学メディアの規格化のための組織「DVDフォーラム(発足時名称は「DVDコンソーシアム」)」を共同で発足。
「MMCD」陣営がやや大きめに譲歩する形で「DVD-ROM」が誕生することになった
のでした。

…なったのでしたが…

問題は後年、「書き換え可能型のDVD」を開発する際に発生します。

当時世間では1回書き込み可能な「CD-R」や、書き換え可能型の「CD-RW」が流行り始めており、当然同じ「書き込み可能型」「書き換え可能型」のDVD、
すなわち「R(Recordable)」「RW(ReWritable)」の登場も期待されていました。

そこで「DVDフォーラム」は、1回書き込み可能な「DVD-R」規格と、さらに書き換え可能な「DVD-RAM」規格を検討したのですが、
この「DVD-RAM」が騒動の発端となります。

今でこそ「DVD-RAM」が読み込めるドライブは珍しくもありませんが、実は「DVD-RAM」はその「読み書き」仕組みが「DVD(-ROM)」とは異なる方法を取っているため、それまで発売していた「DVD-ROMドライブ」では読み取ることが出来なかったのです。

※詳細は割愛いたしますが、主原因をごく簡単にご紹介すると…
「DVD-RAM」規格ではその記録面において、本来ただの平坦部分である「ランド」部にも情報を記録し、その情報も読み取りの際に必要になったのです。
しかし、「DVD-ROM」規格では「ランド部分からも情報を読み取る」という機能が無いため、
当時の「DVD-ROM対応ドライブ」では「DVD-RAM」を読むことが出来ませんでした。

つまり「DVD-RAM」の利用は、読み取るだけでも新たに「対応ドライブ」を購入し直す必要があったのです。

これに難色を示したのが、「MMCD」陣営であったソニー、フィリップスなどでした。
書き換えが可能なディスクは「DVD-ROMドライブでも読み取り可能な互換性をもつべき!」と主張。
「DVDフォーラム」内で激しく議論されることになります。

しかし「DVDフォーラム」では「DVD-RAM」への賛同が増えていき、結局正式な規格として「DVD-RAM」が発表されてしまいます。
そこでソニー、フィリップスは「DVD+RWアライアンス」という別組織を結成。
「DVD-ROMドライブでも読み取り可能!」という互換性を「売り」にした「DVD+RW」を発表して事実上の対抗規格を立ち上げたのでした。

※なお、互換性については、開発途中で「DVD+RW」の互換性がそれほど高くない(≒DVD-ROMドライブで読み込めないケースもわりと多い)ということが
判明したため、互換性を比較的高められる「DVD+R」も開発、数年後に発表されました。
「実は+RWの方が先」というのは、開発の順番としては少々違和感がありますよね。

その後…

支持企業の多さや販売網の広さから、「DVD-RAM」が順調にシェアを拡大するかと思いきや、「DVD-ROMドライブと互換性無し」という点を嫌われてしまい、「DVD+RW」を支持する企業が数多く現れることになりました。

その状況に焦りを感じた「DVDフォーラム」内の各社は、パイオニアが開発した
「DVD-ROMドライブとも互換性のある書き換え可能型」の「DVD-RW」を正式策定し、市場に投入。

かくして量販店には「DVD-R」「DVD-RW」「DVD-RAM」「DVD+R」「DVD+RW」…と、似たような名前が乱立し、買う側としては当惑する事態が発生することになったのでした。
せっかく規格を統合したのに…。残念な展開です。

これが「+」と「-」の誕生の物語です。実は「書き換え可能型」の開発が、「+」「-」の垣根を作ることになったとは、意外に思えるのではないでしょうか?

ちなみに規格発表の順番を簡単に整理すると、以下のようになります。

規格発表の順番

また、それぞれの特徴としては、以下のようになります。
詳細にはそれぞれ異なる長短所がもっとあるのですが、全種対応の「スーパーマルチドライブ」が普及している現在では、
購入・使用にあたって注意すべき差異などは、ほとんど無くなりつつあります。

DVD-R

  • 1回書き込み可能
  • 普及率が高く、そのため値段が低価格な傾向アリ

DVD+R

  • 1回書き込み可能
  • 「DVD-R」に比べると、若干互換性が高い(再生できるドライブ・プレイヤーが多い)
  • 「DVD-R」に比べると、若干割高な傾向アリ

DVD-RW

  • 1000回書き換え可能
  • やや低価格

DVD+RW

  • 1000回書き換え可能
  • やや割高

DVD-RAM

  • 10万回(!!)書き換え可能
  • Windows XPの時から標準機能で利用でき、書き込みに「専用ソフト」が不要だった。
    ※他のメディアがOS標準で対応したのは「Windows Vista」から。
  • 書き込み時に「ファイナライズ」などの処理が必要なく、ハードディスクと同様に「コピー&ペースト」などのファイルフォルダ操作で、
    内部へのデータの書き込みや削除、移動が可能。

    ※つまり「PC」などでのデータ読み書きに適した媒体と言えます。
    ただし、書き込みソフトの進歩などで、「±RW」でも、同様の操作が出来る(出来ているように見せている)場合があり、
    データ操作性の差はかつてより小さくなっています。

余談ですが、海外では「+R」「+RW」の方が普及しているそうです。
「DVD+RWアライアンス」に海外企業大手の「HP社」「DELL社」が参入し、世界で販売したことから、このような結果になったのだとか。

「う・ん・ち・く」説明をたたむ

【ここをクリック!】ちょっと「う・ん・ち・く」:「DL」と名の付く大容量DVD

原理は知らないまでも、この「DL」との名称が付いたメディアがどのような特徴を持っているか、ご存知の方は多いのではないでしょうか?

「2層式」などとも呼ばれるこの「DL」は「ディスク内部にレーザーの反射層を『2層』用意し、記録容量を倍増させたもの」ということになります。

【±R DL断面図】(簡略図)

すなわち、ディスク裏面からみて手前側の反射層を「半透明」に、奥側の反射層を「全反射」にして、レーザー光線の焦点を調節することで、容量を倍加させたのです。

もっとも、片面1層式の「4.7GB」に対し、「DL」は「8.5GB」と、単純な「倍」にはなっていません。

これは、奥側(レイヤー1)の反射層の「ピット」が、多少余裕をもって配置されるようになっていることが理由です。
レーザー光線が奥側の層に焦点を当てる時、手前の反射層を通過して往復する分、読み込み、書き込み精度が落ちてしまうため、このような処置がなされているのでした。

ちなみに「DL」の読み方ですが、「+」と「-」で、実は異なります。
「+」では「Double Layer」(ダブルレイヤー)
「-」では「Dual Layer」(デュアルレイヤー)
同様の規格同士、名称で干渉することが無いようにしつつ、略語上では同じに見えるようにしてあるわけですね。

「う・ん・ち・く」説明をたたむ

「DVD」の場合をたたむ

【ここをクリック!】「BD」の場合

いよいよ最後の光学メディア規格、「BD」の登場です。

「BD」とは冒頭で記載させていただいた通り、「Blu-ray Disc」の略。そして「ブルー」の部分のスペルが「Blu」なのは、誤植というわけではありません。
「Blue-ray」とした場合、英語圏では「青い光(光線)」という意味での一般名詞扱いとなってしまい、
商標登録ができなくなる可能性があったため、「Blu-ray」という「造語」にしてあるのです。

容量はさらに増加し、「DVDの5倍強」にあたる「25GB」!(片面一層の場合)
CDと比べれば、同じサイズなのに35倍以上!の容量アップです。

…今度こそ!目を見張る最新テクノロジーが…!と思いきや、

ピットの幅や間隔を減らして、容量を5倍以上にしました!!

…これこそが乱暴にも「CDもDVDもBDも、実は大して変わらない」と銘打つ理由です。
つまり「CD」から「BD」に至る進化はすべて同じスタイルの上にあり、小さく作ることを次々成功させた結果だったのでした。

具体的には以下の驚異的な比較図をご覧ください。

【ここをクリック!】「CD」「DVD」「BD」の比較: - 各要素の物理的な大きさ
「CD」「DVD」「BD」の比較:各要素の物理的な大きさ

大変な比較となってしまいました。
あれほど小さな世界に思えた「CD」のピット幅に、「BD」であれば2列(2トラック)分が収まってしまいます。
ピットの幅や最小長、ピット間の間隔といったものはすべて「DVD」の半分以下。ビームスポットも1⁄3に迫るほど小さくなっており、
これらの高密度化によって「DVDの5倍強」の大容量を実現したのでした。

※もっとも、これ以外にも「DVD」には無かった多数の新技術や工夫があります。
ただし、詳細かつ難解な技術が大半となりますので、解説は割愛させていただきました。あらかじめご了承ください。

「CD」「DVD」「BD」の比較: - 各要素の物理的な大きさをたたむ

さて、「BD」で使用されているレーザーのビームスポットは、とうとう「0.48um」というサイズにまで小さくなりました。
この実現には、当然ながら、「レーザー光の周波数の変更」が関係しています。
「CD」では「赤外線レーザー」、「DVD」では「赤色レーザー」と、ビームスポットを絞るためにレーザー光の周波数を「高い」方向へシフトしてきましたが、では「BD」は…?

といっても、名称に含まれていますので、多くの方がご存知かと思います。
「ブルーレイ」すなわち「青紫色レーザー」が、「BD」で使用されているレーザー光線です。
その波長は可視光の上限に近い「405nm」。「赤色レーザー:650nm」よりもぐっと短い波長≒高い周波数のレーザーで極小のビームスポットを実現したのでした。

※参考までに「DVD」の項目でご紹介した「電磁波のスペクトル」の簡略図をご覧いただくと、よりわかりやすいかと思います。

なお、「BD」にも、「DVD」にあった「DL」のように「多層式」のものがあります。販売店などで探せば見つかる「BDXL」という規格ですね。
通常、「2層式」はDVDと同じ「DL」の表記が付き、「3~4層式」が「BDXL」と呼ばれます。その容量は、

1層式:25GB
2層式(DL):50GB
3層式(BDXL):100GB
4層式(BDXL):128GB

容量が単純な25GBの倍々ではなく「BDXL」と呼ばれ始める「3層式」から跳ね上がっていますが、これは「BDXL」規格において、1層あたりの容量が「約33.4GB」(4層式の場合「約32GB」)に引き上げられていることによります。つまり通常の「BD」規格とは「1層目」からして異なった仕様になるため、実質上違う規格の光学メディアとも言えます。「BDXL」のディスクは「BDXL非対応」のドライブでは読み書きできませんので、ご注意ください。

「BD」の場合をたたむ

以上、3種類の光学メディアに対しての解説は、ひとまずここで終了です。
光学メディアはすでに30年程前から市場に現れたものになりますが、
今現在も色褪せることのない驚異的な技術を用いて確立されている製品であることが、おわかりいただけたのではないでしょうか?

説明をたたむ

光学メディア・雑記帳

最後に、光学メディアに関するあれこれについて、まとめてご紹介いたします。
守ったほうがいい「BD保管方法」や、次世代光学メディアの話など、ちょっと気になるテーマを取り上げてみました。

もっと知りたい
光学メディア取り扱い+保管における「やっちゃいけないこと」

傷をつけない!

もはや言わずもがなの注意点で、好き好んで傷をつける人もいらっしゃらないでしょう。
ここまでご紹介した各光学メディアの仕組みをご覧頂いていれば、避けなければいけないことであると想像がつくと思います。
やや意外な注意点としては、「CDの場合、印刷面(レーベル面)にも傷をつけていけない」ということ。
「何が違う?CD・DVD・BD」の項目の「CDの場合」でも少し紹介いたしましたが、CDの「記録層」は「印刷面」からわずか「0.04mm」程しか厚みがありません。この薄さであれば、鉛筆やボールペンで印刷面を「ガリッ」とするだけで、中のデータは破壊されてしまいます。
プレスCDであれば印刷面の印刷もある程度硬さがある上、印刷面を傷つけるような行為もすることはないでしょうが、印刷面にタイトル等を書き込む可能性のある「CD-R」や「RW」では特に気をつけることをオススメします。
…それと、先が柔らかいといって、溶剤を使用したペンでの書き込みにはご注意を。印刷面が溶ければ当然データは破壊されてしまいます。

丸く拭かない!

裏面が汚れてしまった際、やむを得ず柔らかい布でディスクを拭く時の「向き」についてですが、
レコードを扱ったことのある世代であれば、違和感を感じるかもしれません。
「『円盤を拭く』といったら、見た目でわかる『筋』にそって『丸く拭く』のが基本だろ!」と思われるかもしれませんが、これが実は禁止事項なのです。
汚れを取るための「拭く作業」というのも、表面に傷をつけやすい行為。表面の汚れやホコリが拭きとりの際に引きずられることで、微細な傷がつくことも多々有ります。
『丸く』拭いてしまっていると、その傷はピットやグルーブに沿うように、同じ方向についてしまうわけですが、万が一、その傷が反射光に影響を及ぼすほどのものだった場合、読み取れなくなるピットやグルーブが延々と続くことになってしまいます。するとドライブは読み取っている位置を見失ってしまって『読み取り不可!』と判断。つまり「データは失われた」ということに…!
光学メディアを拭く場合は、中心から外側にまっすぐ、放射線状に拭きましょう。
仮に傷がついても、その方向がピットやグループに対して「横方向≒直角に交差する方向」であれば、読み取れなくなる場所は一瞬。その程度の僅かなデータの欠損であれば、ディスク内に併せて記録されている「エラー訂正用データ」を使い、読み取りを修正してくれるのです。
もちろん、「横方向の傷ならどんな状態でも大丈夫!」なんてわけではなく、程度問題ですので、日頃から汚れができるだけつかない使い方を心がけてください。また、ティッシュなどは(製品にもよりますが)意外と傷がつきやすいので、汚れの拭き取りには光学ディスク専用の布か、眼鏡拭き用の滑らかで柔らかい布を使いましょう。

ディスクにものを重ねて置かない!

むき出し・重ね置きはいただけません。ほとんどの状況で、ディスク全体に均等に力が加わるようなことはないため、ディスクに「反り」が発生する可能性があります。
そうなれば読み書きは不可能となるでしょう。専用のケースなどに保管するよう注意しましょう。

直射日光に当てない!

日光に含まれる紫外線は、光学メディアにとって最大の敵です。
紫外線は材料を変質させやすい光線であることから、数時間も日向においておけば、データが破壊される可能性が跳ね上がります。
しかも品質によって差がでるため、格安メディアなどの場合1時間程度で影響がでることも…!
うっかり窓際に置いて放置してしまうのは大変危険ですので、十分注意してください。
なお、直射日光程ではありませんが、実は「蛍光灯の光」もあまりよろしくなく、わずかながらディスクにダメージを与えたりします。
神経質になる必要はありませんが、『そもそもむき出しで置いておくのは良くない』という点を、頭の片隅に留めておいたほうがよいでしょう。

高温多湿は避ける!

「高温」や「多湿」は樹脂層の膨張・収縮、すなわち「変形」を招きやすくなり、また材質の変化を促しやすくなります。もっともしやすい失敗は、「夏場の車内放置」。
自然ではありえないほどの高温にさらされますので、ディスク変形、記録層破損の危険が高まります。ご注意ください。

まとめ:専用ケースに入れ、湿度の高くなり過ぎない冷暗所で保管しましょう!!

つまりはしっかりと「整理整頓」に努めるのが保管の肝になります。
使用したらこまめに片付ける習慣を身につけましょう!

…なお、しっかりした保管環境であっても、経年変化によって、データ破損の危険は発生します。
相当の年数が持ちますが、半永久的なものではありません。
本当に大切なデータは、複数コピーをとって、ハードディスクや複数のディスクに分散保管することを、オススメします。

ちなみに「BD」の場合、さらに気をつけていただきたい、かつ陥りがちな注意事項があります。
次の項目を御覧ください。

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「BD」は、「CD」「DVD」用の不織布製入れ物を使用してはいけない!

「CD」や「DVD」などを大量に保管できる「ディスク用ファイル」というものがあるのはご存知でしょうか?
ファイル1冊にディスクが20枚、30枚と大量に格納ができるアイテムで、電気店のサプライコーナーなどではよく目にすると思います。
このファイルにディスクを格納する際、裏面にあたる部分によく使用されているのが「不織布」というもの。
繊維を絡み合わせたシートで、裏面に傷がつくのを防いでいるわけですが、実はこの「不織布」、「BD」にとっては「凶器」になってしまいます。
あの柔らかい、布と紙ナプキンの中間のような「不織布」が、なぜ「凶器」なのでしょう?

BDXL断面図

実は「BD」の記録面は、裏面からわずか「0.1mm」の位置に配置されているのです。
つまり記録面を保護する「カバー層(保護層)」が最大でも「0.1mm」しか厚みがない。「CD」の「1.2mm」、「DVD」の「0.6mm」に比べると、とてつもなく薄い層でしか記録面を保護していません。
レーザースポットを最大限に絞り込むためには焦点距離は短くする必要があったため、記録層は裏面近くに配置するしかありませんでした。
そしてこれが「BDXL」ともなると「0.1mm」の中に最大4層もの記録層を並べているのです。裏面のカバー層はとうとう「0.05mm」の極薄になってしまうのでした。

こうなってしまうと、裏面の傷が極微細なものであっても、直接記録面に接するほどのダメージとなりかねません。

そこで問題となるのが、「不織布」です。
「不織布」は本来ディスク裏面に傷をつけないための保護の役割がありますが、非常にデリケートな「BD」にとっては、「紙ヤスリ」同然。迂闊に収納すると、不織布によって「0.1~0.05mm」のカバー層が削れてしまい、データの読み書きが不可能になってしまうことがあるのです。
また、極小の記録面の構造のため、わずかな傷による乱反射が読み書き不能のトラブルを引き起こしやすい、という面もあります。

よって、「BD」の保管においてベストなのは、前項目で紹介した取り扱い・保管方法に加え、音楽CDなどが入っているような、「硬質なケース」を使用することです。またなめらかに加工した「BD専用不織布」を使ったケースもありますので、そういった製品を使用すると良いでしょう。

サイズが同じだからといって、くれぐれも「昔から使っているCD収納ファイル」に、ガサッと「BD」を差し込まないよう、ご注意ください。

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「BD」の対抗馬。「HD DVD」ってのがあったと思ったけど…?

「BD」の対抗規格として、かつて「HD DVD」というものがありました。
ソニー、フィリップスなどが中心の「BD」規格に対抗すべく、東芝とNECが中心となり、「DVD」規格を策定した「DVDフォーラム」によって
2002年に「HD DVD」も策定されました。「BD」規格策定公開の6ヶ月後のことです。
「BD」と同じ「青紫色レーザー」を使用し、「片面1層:15GB」「片面2層:30GB」の容量をもつメディアでした。
※「BD」の場合、「片面1層:25GB」「片面2層:50GB」

当初は「ワーナーブラザース」などが「HD DVD規格でしかコンテンツを販売しない」という専売路線を表明したり、マイクロソフトやインテルが賛同し、
家庭用ゲーム機「XBOX 360」のオプションドライブとして採用されるなど、一定の支持を得て「BD」との規格争いを展開していきましたが、
次第に性能差の不利が際立ち、価格差の有利が消滅する事態に直面していきます。

容量が「BD」よりも小さく、2003年から開始された地上デジタル放送の録画も、片面1層では2時間未満しか録画ができない「HD DVD」は、その分「DVDの製造ラインの一部流用が可能」という「低コスト」を売りに参画企業取り込みを図ります。しかし、生産体制が拡充されていく「BD」の製造コストは徐々に下がり、販売価格も下落。「HD DVD」と遜色のない、もしくはそれ以下の価格で販売されるようになっていきました。「BD」に対するアドバンテージが消失してしまったわけです。

そして2006年、NECは光ドライブ事業から事実上の撤退(光ドライブ事業が独立し、ソニーとの合弁会社設立)。
参画企業も次々に「HD DVD規格からの撤退」「BD規格への方針転換」が発生。
主導企業として踏ん張っていた東芝も、2008年2月、ついに完全撤退を表明し、ここに規格争いが終結したのでした。

「HD DVD」とは「BD」規格に敗北し歴史に消えた、DVDの流れを組む「もう一つの光学メディア規格」だったのです。
「ベータマックス」や「VHD」といったものが思い出されますね…。

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光学メディアの『未来』~さらなる性能アップはあるのか?~

レーザーの種類を変え、ビームスポットを極小化することで、容量アップが繰り返されてきた「光学メディア」。
「赤外線」→「赤色」→「青紫色」と進化してきたのだから、次は「紫外線」のエリアで容量大幅アップ!!

…というわけにはいきません。

というのも、「紫外線」が物質に与える影響力は甚大で、照射した際に変質せずにいられる材質というものが、
個人で入手できる程度の価格に抑えられる物質では存在していないのです。

さらに別の問題として、「別媒体やサービスの台頭」が挙げられます。
記録媒体として、USBメモリやSDカード、SSDなどのフラッシュメモリや、ハードディスクなどが躍進しています。容量もさることながら低価格化も進み、買い控えなければいけない状況も少なくなっていることから、「安価に」「手軽に」という「光学メディア」の魅力は削がれつつあります。
また、「クラウドサービス」を始めとする、ネットを経由した外部サービスへのデータ保存も年々一般化しており、『敢えて「光学メディア」に記録し、手元に置いておく』という必要性が薄れてきています。低価格のネット環境が充実し、クラウドサービスに預かってもらえる容量が今後も増えるなら、破損や劣化する可能性が僅かながらある「光学メディア」にデータを残すということも、その意味がますます失われることでしょう。

そのため「『光学メディア』はもう限界」というのが、業界でまことしやかに囁かれているのだとか。

ただし、開発が完全に停滞しているわけではありません。
データをディスク上に3次元的に記録し、容量拡大を図る「HVD」という規格や、
本来ただの「溝」となっている「ランド」部にもピットを配置することで大容量化を目指す「アーカイバル・ディスク」といった規格。
これらはいずれも、同じ12cmディスクでテラバイトを超える容量が得られるとされています。
開発途上の現在は主目的が「業務用」となっていますが、実用化されれば個人利用を目的として普及する可能性も秘めています。

さすがに「もう間もなく」と言える状況には無いのですが、上述の2規格以外にも「第4世代」(CD=第1世代・DVD=第2世代・BD=第3世代)の光学メディアについて、
日夜研究・追求が続けられ、商品化を目指しています。ひょっとすると、不意に全く新しい「光学メディア」が台頭してくるかもしれません。

今後の進展を期待したいものです。

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「奥深き光学メディアの世界」

いかがでしたでしょうか?
光学メディアは、30年も前にその中核となる技術が芽吹き、時とともに進化・成長してきたのです。

あの時初めて見た7色に輝くCDに、思い出の映画を鑑賞したDVDに、今手にとっているBDに、
これほどの技術が費やされていると考えると、感慨深いものがあることと思います。

レコードで音楽を聞いていた時分に、「光学メディア」などは想像もつかない、SF映画に出てくるような未来のアイテムでした。
今やいたるところで見つけることができる普通の製品です。
気がつけば「未来を手に入れていた」ということかもしれませんね。

次の「未来」はどんな形に、どんなものになって目の前に現れるのか。
期待したいと思います。

(注意) 本掲載内容は2015年12月時点での情報を基に作成しています。また、広く理解しやすい内容とするため、「例外的内容」「特殊な内容」「厳密かつ正確な記述」など、一部の情報についてはあえて要約・割愛している場合があります。あらかじめご了承ください

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